会計コンサルティング業界における組織マネジメント

私が尊敬する経営コンサルタント藤田勝利さんの著書『ノルマは逆効果~なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか~』を拝読しました。「組織マネジメント」に関する基本をドラッカーの言葉を引用しながらとても分かりやすく解説されており、今の時代に合う「組織づくり」のヒントが沢山紹介されています。ベンチャー企業の経営者や、これから事業を興し組織を創ろうと考えている方々に特にお勧めの1冊です。

当社のように会計コンサルティング会社や監査法人、税理士法人などでは、様々なバックグラウンドを持つ有資格者・即戦力人材が中途採用により入社してくることから、同じ目標や目的意識を持って働くのは非常に難しく、「出入り」の激しい業界だと感じています。この業界では、本書の指摘にあるとおり、単に売上目標等を管理職の者が配下メンバーに説明しても「腑に落ちる」はずがなく、実務担当者の目線に立つと、「新規顧客の受注」=「面倒な仕事がまた増える」としか思ってもらえないこともしばしばあります。また、日々の業務に忙殺され、「何のために働いているか?」「誰のためにやっているのか?」という疑問を抱えながら仕事をしている会計士がとても多いです。

このような職場で、従来型のマネジメント手法、つまり上司と部下の関係であったり、目標管理の仕組みを導入して人事考課を取り入れても、「成果をあげられない」ということを本書を通じ再認識しました。

  • 自分達が強みを発揮できる支援業務(勝負したい土俵)がどこか?(顧客がどこに一番の価値を感じて頂けているか?)
  • その分野で圧倒的な顧客からの信頼を得るために、組織として必要な行動習慣が何か?
  • その行動をメンバー全員が習慣化するために、どのような「仕組み」(インセンティブや役割分担、社内ルール等)が有効か?

これらを社内メンバー同士でディスカッションし、本当に「腹落ち」したところで、「成果のあがる組織」づくりを考えて行きたいと思います。そして、顧客(ファン)を創り出すことに貢献できている、そう実感できる社員を1人でも多く増やせるよう、組織としての魅力づくりとバックアップ体制を同時に考えていきたいと思います。

孫正義-300年王国への野望-に学ぶ プラットフォーマー戦略

「孫正義ー300年王国への野望ー」(日本経済新聞社)は、巨大企業ソフトバンクを築いた孫社長がどのような経営者かを知るうえで、とても参考になる。特に、米スプリント社に続き英アーム社を買収した背景に「一貫した戦略」があることを理解でき、これからの同社の成長が楽しみになった。

本書でも紹介されているとおり、孫社長は米国の石油会社を例に出し、「シェアで1位になるとそのエリアでライバルを完全に制覇したら値段を少しずつ上げて儲かるようにしていく」というマーケティング戦略を語られることがあるそうだ。

ロックフェラーのように「流通の上流と下流の最大手を一気に独占してしまうことが、流通のプラットフォーマーとなる最短距離だ」との考えは、大胆だがとても興味深い。ここ最近のソフトバンクの一連のM&A戦略も、この視点から考えると一貫性があることに気付かされる。

また、本書では、ソフトバンクが現在の巨大企業になるまでに、様々な方々の支えがあったことを紹介している。成長ステージによってCFOの求められるスキルが異なることを、実例を読んで改めて感じた。

「ツーペア」より「フォーカード」を狙うという孫社長流の思考法を見習いたい。

7つの習慣に学ぶ時間管理ー第二領域の時間の作り方

3月決算の会社に勤められている経理部門の方は、この時期、1年で一番忙しい時期に差し掛かっている頃かと思います。

納期や締め切りに追われる日々が続くと、どうしても本来はやらなければならないと自覚している重要な業務が後回しにされ、昨年よりも良くなった(成長した)と感じられるような成果が得られないという経験はありませんか?

この点、「7つの習慣」(スティーブン・R・コビー著 キングベアー出版)の第3の習慣で時間管理について解説されており、私はいつもこの考えを意識するように心がけています。

本書では、下の図のように緊急度を横軸、重要度を縦軸として、仕事を分類します。

時間管理マトリックス

具体的にどのような仕事が分類されるかというと、

重要かつ緊急度の高い第一領域:

  • クレーム対応
  • 締切りのある仕事
  • 病気や事故等

重要だが緊急ではない第二領域:

  • 社内のマニュアル作り
  • システム作り
  • 集客の仕組み作り
  • 品質改善

重要でないが緊急度の高い第三領域:

  • 大半の電話
  • 無意味な接待や付き合い等

重要でも緊急でもない第四領域:

  • ネットサーフィン
  • 単なる遊び等

 

当然、ビジネスにおいて重要なのは、第二領域の仕事をこなしていくことです。

システムが構築できれば、作業の効率があがり、納期を守れる。

集客システムを構築できれば、その場凌ぎのセールスをしなくて済む。

サービスの品質を上げれば、クレームが減る。

というように、第二領域の仕事を増やすことで、緊急である第一領域の仕事をどんどん減らすことができるようになります。

とはいえ、「それがなかなかできない」というのが現実です。

ついつい、第一/第三領域の仕事ばかりに時間がとられ、

第二領域のための時間がとれない・・・。

今年こそ、業務のやり方を改善して効率化しようとしていたのに、締切りが間に合わないので、結局、去年と同じやり方になってしまった・・・。

その結果、部下への引継ぎも思うように進まなかった・・・。

 

このようなことの繰り返しや「言いわけ」を避けるため、私が実践していることをいくつかご紹介したいと思います。

ポイント①:毎週、必ずまとまった時間を確保するように計画する

どんなに忙しくても、第二領域の仕事をする時間を予めスケジュールに入れ、しかも細切れではなくまとまった時間を確保するようにしましょう。

こうすることで、意識して第二領域の仕事を効果的・効率的に実行でし、成果も得られるようになると思います。

ポイント②:重要度の判断がブレないように明確にしておく

締切りに追われ、忙しいくなると、どうしても重要度の判断を都合の良いように解釈してしまい、その結果、本来、やらなければならないと自覚している事項を後回しにしてしまいがちです。

しかし、重要か否かは、達成したいと考える目標・組織であればミッションや経営目標、それに基づく予算等をクリアするのに必要な業務かどうかで決められるべきものであり、本来、緊急度の高い仕事の発生等で重要度を変えるべきではありません。

したがって、判断がブレないようにするため、予め文章・タスクに落とし込んでおくべきです。

私の場合も、常にやらなければならない課題・タスクをリスト化し、週に1度は目を通すことを習慣にしています。

ポイント③:目標(企業の場合は、ミッション・ステートメント)の精査

この4つの領域の目的は、中長期的な目標・夢に貢献する第二領域を増やすことにありますが、そのためには時間の使い方を見極めること以外に、目標・計画を精査することも必要です。

目標や計画を精査することで、いままで重要事項だと気付かなかった事項を自覚できるようになれば、第二領域を増やすことができ、その結果、夢の実現に向けて一歩近づけるようになるでしょう。

 

忙しさを「言いわけ」にせず、本来やらなければならないと自覚している重要な事項を見失わない習慣を身に着けたいですね。自戒を込めて。

 

HARD THINGSに学ぶ難題への対処法

「HARD THINGS:答えがない難題と困難にきみはどう立ち向かうか」は、著者であるベン・ホロウィッツが「困難を経験してきた者のみが得られる教訓もあるし、それに基づいた有益な助言もある」と考えて書かれたものであり、CEOに限らず、事業責任者やマネージャーがマネジメントで困難な課題に直面した際、とても参考になる一冊です。

ホロウィッツは、「平時のCEOと戦時のCEO」という節で、以下のように言っています。

「平時と戦時とでは、根本的に異なる経営スタイルを必要とすることを私は経験から学んだ。」・・・「平時のCEOは会社が現在持っている優位性をもっとも効果的に利用し、それをさらに拡大することが任務だ。そのため、平時のリーダーは部下からできる限り幅広く創造性を引き出し、多様な可能性を探ることが必要となる。しかし戦時のCEOの任務はこれと逆だ。会社にすでに弾丸が一発しか残っていない状況では、その一発に必中を期するしかない。戦時には社員が任務を死守し、厳格に遂行できるかどうかに会社の生き残りがかかることになる。」

確かに、スティーブ・ジョブスがアップルに復帰したときはまさに「戦時」と言うに相応しい時期でした。社員一人一人の創造性よりも、ジョブスの強烈なリーダーシップが会社を窮地から救ったのだと思います。一方、検索市場で覇権を確立したあとのグーグルは、イノベーションを起こすための組織風土創りを行い、世界から注目を集めました。このような戦略は「平時」にこそ有効なのだと思います。

これまでの経営書は、平時のCEO向けの内容が多かったので、私は、「本当に知りたいのはそこじゃないんだ」と思うことが良くありましたが、本書のような切り口は実に新鮮で腑に落ちます。

そして、本書では、こうも言っています。

「困難なことの中でももっとも困難なことには、一般に適用できるマニュアルなんてない」

「会社が本当の危機に直面したときにはレモネードのスタンドも経営したことがないような評論家の経営書など何の役にも立たない」

真に、これが現実です。内情を知らない第三者はとかく独裁的なCEOを「ブラック企業のボス」呼ばわりしますが、本書は容赦ない独裁者だけが会社を救える場合があることを具体例で示してくれており、勇気を与えてくれます。ただし、「正しい野心と間違った野心」の節でも述べられているとおり、こうした「戦時」の独裁はあくまで会社を救うことが目的であって、自分のエゴのためであってはいけません。この点を頭の中で整理できたことが、私にとっては最大の教訓となりました。

事業のスタートアップ期は、計画通りに物事が進まないのが当り前であり、経営方針や戦略は変わることも多いと思います。このような岐路に立たされた際に困難な課題に目を背けることなく、自分が正しいと思う判断や意思決定を下すとき、この本は読者にとって大きな勇気を与えてくれます。

 

ザッポスから学ぶサービス・カンパニー

以前、ある方の紹介で「ザッポスの奇跡」を読み、その時は、”こんな会社を創りたい”と思いました。それ以来、バイブルとして繰り返し読み返すようにしています。先日、この「ザッポスの奇跡」を久しぶりに読みましたが、当時の想いが蘇り、自社のサービスや社員教育を考え直す良い機会になりそうです。

これからの時代、企業が持続可能な成長をするための源になるのは、何といっても人です。その社員が日々の業務で判断するときの拠り所になる一貫したポリシー(経営理念)が強い会社を支えるのだと、この本は教えてくれます。

ザッポスのビジネスは、「靴のオンライン販売」です。
しかし、彼らは「(私たちの会社は、)『たまたま靴の販売業を営んでいるにすぎない』サービス・カンパニーです。」と説明するそうです。どの社員もそう答えるほど、同社のDNAとも呼べる一貫したポリシーが浸透しているところがザッポスの強みとなっています。
「顧客フレンドリーなサービス・ポリシー」や「常識はずれのコンタクトセンター」など、本で紹介されている同社のサービスの特徴は、一見真似できそうに思えますが、これを徹底するとなると非常に難しいことばかりだと思います。

最近、大手の企業では、あらゆる業務でIT化やシステム化が進み、生産性・効率性が飛躍的に向上しています。しかし、どんなにITを使って自動化し効率化を進めていっても、最終的にそれを使いこなすのは人です。したがって、どのようにシステム・ITを有効活用するかをアドバイスするサービスは絶対に必要ですし、最近はその重要性が益々高まっていると感じます。

私どもが提供しているサービスの領域でも、ERPや連結決算システム、ディスクロージャー支援システムの機能は日々進化し、もはやこれらのツール(システム)がなければ業務が回らないようになっております。これらのツールを使いこなすノウハウは、最終的に人から人へ伝えられていかなければなりませんが、専門知識を必要とする業務領域であること、業界全体で人手不足の状況が続いていること等の要因から、大手企業であっても業務の引継ぎがままならない会社が増えてしまっております。このような時代であるからこそ、「システムの機能の向上」よりも、「人による付加価値の高いサービス」が必要とされるのだと思います。

AI(人工知能)の技術発達により、もしかしたら近い将来はロボットがこれらの領域の主役になるかもしれません。しかし少なくとも現在は、IT化・システム化への投資が進み、高度なシステムに依存する業務が増えたことの弊害として、
”(手作業していた頃と比較して)業務に対する理解が低下する”
といった現象が色々なところで起きているのではないでしょうか。
ですから、「使いやすいシステムやツール」といった選択肢とともに、かゆいところにまで手が届く「気の利いたサービス」や至れり尽くせりの「家政婦サービス」のようなサービス形態も、選択肢の1つとして求められているのだと私は考えます。

私も、ザッポスを見習い、
”期待を超えるサービスを提供してお客様に感謝され、WOW(驚嘆)を与えられるようなサービス・カンパニーを目指したい!”
この本を読み返して、強くそう思いました。

ビジョナリーカンパニー②から学ぶ新規事業の立ち上げ

「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」は、新しく会社を興して事業をスタートさせる人や新規事業の立ち上げに携わる方にとって、とても参考になる本です。私は、学生の頃、「ビジョナリー・カンパニー」を始めて手にして以後、このシリーズを事ある毎に読み直していますが、読む度に新しい発見があり、示唆に富む内容となっていると思います。今回は、その中の一説を御紹介したいと思います。

誰をバスに乗せるか

この著書でコリンズは、「良好な企業から偉大な企業へ飛躍を遂げ、その実績を少なくとも15年にわたって維持してきた11社」に共通する要因を紹介しています。

コリンズは、このように言っています。

今回の調査を始めたとき、良好な企業を偉大な企業に飛躍させるためには、新しいビジョン、戦略を策定し、次に新しい方向に向けて人々を結集するのだろうと我々は予想していた。調査の結果は全く逆であった。偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずバスの目的地を決め、次に目的地までの旅をともにする人々をバスに乗せる方法をとったわけではない。まず、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。

”このバスでどこに行くべきかは分らない。しかし、分っていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ”

確かにその通りであると、最近、つくづくそう思います。

当初の事業計画どおりに新規事業を立ち上げられることなどなく、現実には、試行錯誤を繰り返し、軌道修正を図りながら事業を創っていくしかありません。問題は、困難な状況にぶつかったとき、最後には必ず勝つという信念を失わず、それを信じるメンバーが同じ「バス」に乗っているかどうかです。

ビジョンも、戦術も、戦略も、組織も、「誰を選ぶか」を決めた後に考えれば良い・・・。

ベンチャー企業においては、特に立ち上げ当初は、経営方針や戦略は変わることもあり得ます。始めから戦略を1本に絞るのではなく、自社の強みが見つかり、成果・業績が上がり始めてから、方針と戦略を策定する方が、よほど現実的であると私は思います。