長時間労働是正に必要な7つの視点④

以前のコラムで長時間労働を削減するための3つのステップをご紹介しましたが、本コラムでは、最初のSTEP01で取り組むべき『削減・廃止』『統合』という2つの視点による改善策の具体例を紹介します。

1.固定資産増減明細と連結キャッシュ・フロー計算書の根拠資料

各社の単体の固定資産担当者が附属明細表などで使う固定資産増減明細の資料を作られ、連結キャッシュ・フロー(CF)計算書作成担当者が、投資CFの金額を拾うために別途元帳やパッケージ等から数字を拾っているというように、1つの作業を複数の担当者が重複して行っているケースがあります。しかし、固定資産の取得や売却については、附属明細でも使い、連結CFでも使うことが分かっていますので、予め必要な数字を拾えるように連結パッケージのフォームを見直したり、エクセルのフォームを工夫すると良いと思います。

 

2.連結/個別の注記情報等(販管費の内訳やCF計算書関係注記等)

BS、PL、CF、SSなどの注記、例えば販管費の内訳やCF計算書関係の注記については、連結精算表や連結CF精算表を見れば直接、数字を拾える場合や、ちょっと加工すれば拾える数字が多いです。このような注記情報については、わざわざエクセルを別ブックにして、注記用の資料を作成するよりも、連結精算表をみればわかるようにしておいたり、あるいはシートを足してリンクを貼って数字を参照して拾ってくるというようにフォームを少し加工して同じブックにしておいた方が、財務諸表が修正になった場合の更新の手間が省けて効率的です。担当者が細かく分かれている会社様などでは、わざわざ別ブックに注記用の資料を作成されている例がありますが、後から財務諸表に修正が入る場合の更新の手間や、本表の数字と注記が整合しなくなってしまうというリスクを考えますと、できるかぎり数値更新の手間がかからないフォームにしておくことをお勧めします。

 

3.連結精算表作成に必要な基礎資料の一部

たとえば、連結パッケージのフォームが暫く見直されておらず、一部のデータはパッケージとは別にメール等で資料を入手していたり、同じ内容の項目であっても会社によって入手の仕方が異なっている会社があります。特に在外子会社があるケースでは、現地の会計事務所から頂くデータを親会社で加工して連結精算表に組み入れたりしているケースが多いと思います。このように必要なデータの入手を連結パッケージなどで集めている場合に、導入当初、システムベンダーや会計コンサルの方と相談して決めたフォームが陳腐化し、不要なデータまで子会社の方から収集していることがあります。また、子会社から元帳等の資料をとりあえず入手し、後から追加の資料や質問を何度も子会社にお願いするといった不効率な作業になってしまっている事例や、連結精算表作成プロセスが特定のキーマンにしかできず、業務属人化してしまっているという会社も多いです。

このように子会社等からの情報収集の仕方が清流化できていないと、結果的に親会社側の経理部連結担当者の負担も増え、それが長時間労働に繋がることも多いので、親会社の担当者の負担軽減を考える際は、是非、この部分の業務標準化やパッケージの見直し等を優先して検討していただきたいと思います。

4.経営指標や1株当たり情報の計算シート

経営指標や1株当たり情報、販管費比率等の注記情報を計算するのに、精算表データとは別のブックで作成されている会社も多いですが、監査法人からの指摘によって財務諸表数値の修正が良く行われるような会社様の場合、個別財務諸表や連結精算表と経営指標等のシートは、同じブックにしてリンク参照により計算する方法をお勧めします。

なお、シート連携させて統合すべきエクセルファイルと、担当を分けるために別ブックにした方がやりやすいものとの切り分けは各社によって状況が異なりますので一概には言えません。判断の目安として、特に開示ドラフトを作りかけている最中に、監査指摘などにより数字の修正が入ることが多い会社様の場合には、更新が面倒なファイルは極力、本表と連携させておいた方が良いと思います。逆に担当割が細かくされていたり、連結システムからの情報をW-iなどを使ってダイレクトに開示書類に反映させているような会社様の場合には、注記に関するブックは分けた方が分担しやすい場合もあります。

以上のように、業務プロセスの見直しをすることにより、「削減」「統合」できる資料を見つけることで、結果として長時間労働の削減に繋がることがありますので、是非、ご検討下さい。

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