決算・開示業務における業務改革(BPR)と業務改善ー④リソース不足の解決方法

本コラムでは、「リソース不足」の課題を解決する方法について解説します。

人手が足りないため、残業時間を減らせないと悩んでいる経営者・管理職の方はとても多いですが、よくよく話を聞いてみると、問題の本質はリソース不足ではなく別の課題に起因していることもしばしばございます。

以下の表では、リソース不足を課題として掲げる会社から良く話を参考に、場合分けを行い、それぞれのケース毎に「ゼロベースで考えた場合の」対策の具体例をいくつか紹介します。

リソース不足のパターンと対策の具体例

①繁忙期の時期に残業時間が多い

「四半期決算は何とかなるが期末の繁忙期の時期にどうしても残業時間が多くなってしまい、それが会社の中で問題になってしまっている」という話を良く聞きます。この課題を解決するために、人の採用を検討している会社もございますが、人を採用しリソースを増やすことだけが解決策のすべてではないことをご理解下さい。

採用以外の対策の具体例としては、「作業の前倒しを検討」「親会社と子会社の役割分担の見直し(例えば、連結パッケージで集める情報の充実を図り、親会社の作業負荷を減らす)」「期末の繁忙期にのみリソースを補充するためにアウトソーシングサービスや個人の会計士等に業務を委託する」等の対策が考えられます。

このうち、最も効果的な施策が「作業の前倒し」です。繁忙期の時期に残業時間が多くなるというのは予め予測できますので、この時期にやることをできるだけ限定し、前倒しできる業務を早めに終わらせるというのがこの施策です。
具体的には、前期(前年同期)情報のチェックや、ストックオプション注記、株式関係の記載など、早めに作業を完了させる事項についてことができますし、経理部以外の部署で担当してもらうことも可能だと思います。
新規科目のタクソノミの設定などは、月次決算等で予め別掲することが分かっていれば、事前に設定しておくと良いと思います。
また、新しく注記しなければならない事項がないか、監査法人と事前協議したり関係部署とMTGをし、論点となる部分については出来る限り早めに対応をしておくと良いと思います。

②特定の担当者のみ残業時間が多い

特定の担当者のみ残業時間が多いというケースも良く聞きます。例えば、開示書類を作成する担当者が1人しかおらず、その者の残業時間が多いことが会社としての課題となってしまっているケースの場合、その要因として、業務が人に紐づいてしまい他の人では手伝えない、あるいは知識・経験が必要な業務だと決めつけ、即戦力の採用ばかりを優先しようとする会社が多いです。ですが、そのような人材は他の会社でも「引く手あまた」なので、なかなか採用がきまりません。

対策の具体例としては、業務の役割分担の見直しを図ること、あるいはその前提としての業務属人化の解消の施策を検討することが必要となります。

③管理部門の人員が足りない

部内メンバーの退職や異動によって、経理部等の人数が足りないと悩まれている会社も多いです。また、社内の人事戦略の一環としてローテーションが頻繁にあり、経験者がなかなか育たないと悩まれている会社もあります。確かに業務量が多くそれをさばくリソースが確保できていない場合には、リソース確保のために人を採用することも対策の1つではあります。しかし、人を増やすという対策以外の選択肢についても検討をしてみて下さい。

例えば、アウトソーシングの活用という施策が考えられます。ここで言うアウトソーシングというのは、連結業務の一部、子会社の財務諸表の連結システムへの取込や親子間取引の相殺消去仕訳の連結システムへの入力業務等や、開示書類の作成・入力業務を外注先に委託することを意味します。このような作業要素の強い業務というのはアウトソーシングに向いていると思います。

それ以外に、グループ会社の業務を親会社へ集約させ効率化を図るという対策や、グループ全体の経理業務を集約させてシェアード会社を作るという改革も考えられます。

また、経理の人を雇うよりは、コンサルティング会社やシステム化のプロに頼んで、ITを活用して業務負荷を削減するという施策をとった方が改革が早く進むかもしれません。

④決算・開示の取り纏めができるキーマン不在

リソース不足と認識されている企業のなかには、よくよく話を聞くと決算・開示の取り纏めができるキーマンがいないことがボトルネックになっているということも良くあります。

これまで弊社が支援してきた会社の中で、特定のキーマンの退職や休職をきっかけに我々のBPOサービスをご利用頂くことになった会社が相当数(およそ3割くらい)ございます。このような事態に陥ってしまった場合、多くのケースでは、まずは即戦力となる人材の採用を考え、採用がすぐに決まらないとアウトソーシングサービスを活用し、後任の採用が決まるまで一時凌ぎしようとする会社が多いです。しかし、アウトソーシングの活用は単なるリソースの補充という使い方以外にも様々な使い方があります。

決算・開示の実務に慣れているコンサルタントに依頼すれば、リソースを補えるだけでなく、業務整理や業務フローの標準化を図ることも可能となります。これによって、業務の引継ぎもしやすくなりますし、経験が浅い方に業務を任せることもできるようになります。

 

このようにリソース不足を補う方法としては、人を採用する以外に様々な選択肢が考えられます。あるいは、業務プロセス毎に検討して、内製化する部分とアウトソーシングを活用する部分を使い使い分けるという考え方も取れます。このように様々な対策や考え方もあるということを、是非知っておいて頂きたいと思います。

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