決算・開示業務における業務改革(BPR)と業務改善ー⑤品質管理体制を改善する方法

本コラムでは、上場会社として求められる品質管理体制を構築するうえで、業務改革・業務改善を担当するマネージャーが何をなすべきかという点について解説いたします。

1.品質管理体制を構築するうえでのポイント

品質管理体制に関して、継続して高い品質を維持するうえで最も重要なポイントについて、まずはお話したいと思います。それは、「起きたエラーには必ず原因がありその原因は品質を構成する要素、システムに問題がある」と考えるようにするということです。

例えば、ある注記情報でケアレスミスによる誤りが発見されたとき、その原因を「特定の担当者の責任」「その人のスキルが足りないから」だと捉えてしまったとしましょう。担当者を変えれば解決すると思って新しく経験者を採用したとしても、こういったミスが再び起きる可能性は十分にありえます。

ミスの原因は確かに経験不足・知識不足にあったかもしれませんが、もっと深く原因を分析すると、

  • チェックをするというフローがそもそも手順としてルール化されていない
  • 入力するプロセスに問題があった

など、さまざまな要因が相互に作用していた可能性があります。

もちろん中には特殊な要因によるものもありますが、ほとんどのエラーは、1回限りしか起きないという性質のものではなく、再発する可能性が多いものです。ですから、失敗が起こるべくして起きたと捉え、徹底的な原因分析を行い、再発しないために開示書類の作成プロセスなどの改善を行うという考え方が、この品質管理を行う上での肝となります。

2.品質を構成する要素

上述したとおり、開示書類等の成果物にエラーが発生するのは、その品質を構成する要素(システム)に問題があるからです。その品質を構成する要素、システムにはどのようなものがあるのかを下図にまとめました。

以下、順に説明していきます。

①1つ目の要素としては、入力・インプットです。これは、どのように情報が入力されたか、ということです。誰が入力したかという意味で、この入力には「人」も含まれます。例えば、ある担当者が入力した情報が誤っていたことに起因してエラーが発生したとして、その人を変えたら良くなるかというと必ずしもそうとは限りません。品質管理を考えるうえでは、人を特定するのではなく、結果を生み出している要素の1つとしての「入力」、つまり再現性があるような人材の採用の仕方やその人を教育する仕組みと理解して下さい。

②2つ目の要素は、環境です。これには物的なものも含まれます。どのような職場環境で作業を行っているのか、例えば、長時間座っても疲れない椅子をつかっているのか?/パイプ椅子を使っているのか?、パソコンの画面は、大きい画面2台をダブルモニターとして使っているのか?/ノートパソコンの小さな画面で作業しているのか?、書類をチェックするときにプリンターで打ち出してチェックできる環境があるのか?/画面上でしかチェックしていないのか?、といった違いでも成果物のクオリティに影響を与えることがあります。

③3つ目の要素は、プロセスです。どのような順番で、誰が、どのような作業を行うのか、というプロセスも品質を構成する要素となります。これはイメージしやすいと思います。

④4つ目の要素は、組織です。どのような組織で作業を行っているのか、上司がチェックする体制になっているのかや、どの部署が作業を担当しているのかなど。

⑤5つ目の要素は、ルールです。どのようなルールがどこまで規程されているのか?、そのルールは適切か?、という点も品質を維持する上で重要です。

⑥6つ目の要素は、会議と報告という要素です。これは、軽視されがちですが、実は極めて重要な要素だと私は考えております。品質を改善するために、どのような会議体がどのような頻度で開催されているのか?、また、エラーが発見されたとき、どのような報告をする仕組みになっているのか?、フィードバックをする(受ける)タイミングはいつか?という要素も、品質改善に大きく影響します。

3.品質管理体制の改善の具体例

例えば、有価証券報告書・四半期報告書に記載する財務諸表本表について、インスタンス(※印)をつけ忘れるというエラーが起きたとします。このようなエラーに対して、上述した各要素ごとに原因分析と改善する方法の具体例を以下の表で紹介します。

上記の例のように、品質管理体制の改善を図る立場にあるマネージャーの方を中心に、まずは起きてしまったエラーの原因を多面的に分析してみて下さい。

そして、単に担当者を注意するだけにとどまらず、BPRの視点に立って、業務プロセスの改善やチェックリストの見直し等についても検討して下さい。

これらが継続して改善が図られるようにするためには、その報告のルール化や定期的なミーティングの開催まで落とし込む必要があります。

是非、継続的に改善が図られる報告・フィードバックの仕組みというものをご検討下さい。

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