プロジェクト型ビジネスにおける業績管理②

私は、株式公開準備企業や上場企業の方から、プロジェクト別損益管理/予実管理に関する相談を年に数件、受けております。

悩みを抱えている企業の業種は、システム受託開発会社、インターネットメディア・広告代理事業を行っている会社、オンラインゲームやソーシャルゲームアプリの開発・販売を行っている企業など多岐に渡りますが、これらの企業の多くはプロジェクト単位での事業を展開されておられます。(以下、これらの会社を「プロジェクト型ビジネス」と呼びます。)

プロジェクト型ビジネスを行っている企業経営者の多くは、損益計画(予算)をどのように立てれば良いかについて様々な苦労をされており、次のような同じ悩みを抱えていらっしゃいます。

「計画を立ててもその通りに達成できた例がない」

「こんなに忙しくしているのに、何故、利益が思ったほど出てないのだろう・・・」

「経理から上がってくる業績報告が遅く、意思決定が後手に回ってしまう・・・」

「プロジェクト毎の採算管理ができていない」

「コスト管理がどんぶり勘定になってしまっている」 等々

 

社長の目の届く範囲内でビジネスをしている小規模企業であれば、社長の感覚、勘に頼った経営をしていても支障をきたさないかもしれませんが、更なる成長を目指している企業、株式上場を目指している企業、ましてや既に上場している企業であれば、このような業績管理では財務責任者が困ってしまうでしょう。

これを解決するために、多額のシステム投資を検討し、社内の業務フローを強制的にシステムの仕様に合わせて変更し、改善を図ろうとされる企業様もいらっしゃいます。

しかし、システムベンダー側で予実管理等の業務経験が無い技術者や営業担当が顧客窓口となり、顧客側のニーズが理解されないまま導入が進められてしまった結果、期待していた効果が得られなかった、といった事例も聞きます。

では、何故、このような同じ悩みを抱えられているのでしょうか?

その原因の多くは、プロジェクト型ビジネスの特徴と関連します。

 

以下の表1は、システム開発やWEB制作など請負契約によりサービスを提供されている会社を例に、プロジェクト型ビジネスの特徴と業績管理の課題をまとめたものです。

(表1)プロジェクト型ビジネスの特徴と業績管理の課題

表1

図表1

このように、契約形態の特殊性、個別案件毎の採算管理が必要、コストに占める人件費の割合が高い等、プロジェクト型ビジネスの特徴に起因して、同じような課題をいくつも抱えている会社が多いのです。

そして、1年先の受注見込額を正確に予測することなど現実には不可能なことなので、

・目標売上高に関して現在のところ、どの程度達成できているか

・このまま予定通りに検収されると今期の着地見込がどうなるか

といった情報をタイムリーに把握することが重要となります。

特に、受注後、検収時までの期間が数ヶ月間にわたる場合、売上に紐付く原価(や販売費及び一般管理費)を把握できなければ、プロジェクト毎の採算を把握することができません。

プロジェクト毎の採算管理を行うためには、管理部門のみならず、製造部門(や場合によっては営業部門)を巻き込んで、全社で業績管理に取り組む姿勢が必要となります。

各プロジェクトへの労務費配賦計算には、現場の方がどのプロジェクトにどれくらいの工数を割いたかを記録・報告してもらうことが不可欠だからです。

業種によっては、労務費の配賦計算までは必要ない会社もあると思いますが、少なくとも複数の事業・サービスを行っている場合には、事業別、サービス別(製品別)に原価を分けて採算管理をすることが求められます。

このように、全社での取り組みが必要で、なおかつ、タイムリーな情報収集が求められることから、プロジェクト型ビジネスの業績管理は難しく、多くの会社で課題を抱えているのです。

皆さんの会社では如何でしょうか?

いま計画されているマネジメントの方法がご自身の会社のビジネスにマッチしているのか、考えるきっかけになれば幸いです。