有給休暇取得の義務化など「働き方改革」の関連法案が施行され、残業時間の削減などへの取組みが急務となっております。そのため、上場会社の管理部門でも、これまで以上に大きな改革が求められ、従来の業務プロセスや組織のあり方そのものを見直す企業も増えております。
本コラムでは、業務改革と業務改善という切り口で、決算・開示業務における課題をどのように解決していくのかというテーマについて解説します。
まず始めに、BPRの定義、そして業務改革が業務改善とどう違うのか、なぜ今、業務改革(BPR)に注目が集まっているのかについて触れていきます。
1.BPRの定義
ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(以下、「BPR」と言う)という言葉が最初に世の中に広まったのは、1993 年に刊行されたマイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピーという方が書いた「リエンジニアリング革命」という本の出版がキッカケのようです。この本では、BPRの基本概念について以下のように説明しています。
リエンジニアリングの定義:
「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」
M・ハマー&J・チャンピー「リエンジニアリング革命」P.57
つまり、コストや品質といったパフォーマンス基準を劇的に改善するため、ビジネスプロセスをゼロベースから考え直し、大きくやり方を変えていくことが業務改革になります。
2.業務改革と業務改善の違い
業務改革が業務改善とどのように違いがあるのかを列挙していきます。
①目的:
業務改善は、今あるものをより良くすること
業務改革は、今あるものをゼロベースで見直し大きく変えること
②発信:
業務改善は、現場からボトムアップで発信される
業務改革は、経営層からトップダウンで発信される
③見直す範囲とプロセス:
業務改善は、特定の業務フローについて試行錯誤しながら段階的に見直す
業務改革は、バリュー・チェーン全体(全社)で抜本的に大きく見直す
④上場会社の管理部の業務についての具体例:
業務改善の具体例は、業務手順の見直しやRPAツールの導入、アウトソーシングサービスの活用など
業務改革の具体例は、組織再編やシェアードサービスの導入、ERPやBPOの導入など
3.なぜ今、業務改革(BPR)が注目されているのか?
現在、上場会社の管理部門においても業務改革が注目されている理由として以下のことが考えられます。
①働き方改革への対応ニーズ
2019年4月から働き方改革関連法案が施行されたことに伴い、長時間労働への対策等は急務となっております。このため、これまでの業務改善のみでは残業削減に限界があると考えられている企業では、これまでの業務プロセスを抜本的に見直し、業務改革を推し進めようとされBPRに取り組む企業が増えております。
②IT技術の進化
最近は、RPAツールの普及やインターネットを経由して利用できるクラウドサービスが続々と誕生しております。これにより上場会社の管理部門においてもこれらのIT技術を活用等により、今まで以上に業務改革に取り組みやすい環境になってきたと考えられます。