東芝 PwCあらた監査法人の起用を発表

会計不祥事を受けて会計監査人の交代を検討していた東芝は、1月27日、現任の新日本監査法人の後任にPwCあらた監査法人を起用すると発表しました。

今後、2016年6月開催予定の定時株主総会に提出する会計監査人の選任に関する議案の内容を決定し、定時株主総会に上程される予定だそうです。

東芝プレスリリース

また、同日、日本公認会計士協会より、会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」が公表され、以下のようなコメントが公表されています。

「監査人は、資本市場の健全な発展に寄与すべく、監査の実施に当たっては厳正な態度で 臨まなければならない。昨今の度重なる会計不祥事は監査の信頼を揺るがすものであり、 公認会計士監査の信頼回復のため、・・・(中略)・・・真摯に監査業務に取り組むことを強く要請する。」

「監査人は強い態度で監査業務に臨むことが必要である。監査は公共の利益のために行わ れている点、すなわち、被監査会社の株主・投資家等、監査報告書の利用者のために行わ れている点を踏まえ、会計不祥事が繰り返されることのないよう、職業的懐疑心をもって 監査を実施しているかを厳しく自問していただきたい。 」(以上、同会長通牒より一部抜粋)

会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」

また、日経電子版によれば、公認会計士・監査審査会は、四大監査法人(新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらた)への検査を強化する方針だとの報道がなされています。

「公認会計士・監査審査会は、国内の四大監査法人に対する検査を強化する方針だ。現在は2年に1度、大手監査法人への立ち入り検査を実施している。今後は通常検査の翌年に問題点の改善状況を確認する簡易検査を実施する。東芝の会計不祥事などを踏まえ、監査の質の向上を目指す。(中略)東芝の会計不祥事で会計監査を担当した新日本について同審査会は昨年末、検査で監査手続きの不備を繰り返し指摘したにもかかわらず改善されてこなかったと指摘。新日本など大手への検査に対するフォローアップ態勢を整え、早期の問題改善を促す。」(2016年1月27日 日経電子版の記事より一部抜粋)

東芝の会計不祥事の問題は、東芝が行った工事費等の会計上の見積に関して、新日本監査法人は実質的に「未修正の虚偽記載」と認識しながら、「特例」として当該会計処理を許容してしまった、という点に問題の本質があると私は考えています。

リスク・アプローチによる監査では、「重要性の基準値」を超えない「未修正の虚偽記載」は修正されなくても監査法人は許容します。しかし、今回のケースでは、第三者委員会の調査報告を読む限り、軽微な金額とは言えないと思います。

どのような経緯で新日本監査法人が東芝の処理を認めたか、現在、調査が続いていますが、少なくとも監査法人内での審査会での判断に疑問が残ります。もっと早く厳格な判断が下されていれば、証券取引等監視委員会による検査にまで発展せずに済んだかもしれません。ですから、今回の件は、単なる1企業の粉飾決算の問題ではなく、公認会計士の監査のあり方、大手監査法人の品質管理のあり方に関する問題として、金融庁や日本公認会計士協が対策を検討しなければならない事態と捉えられているのでしょう。

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