長時間労働是正に必要な7つの視点①

以前のコラム(長時間労働に陥りやすい企業の特徴)で紹介した通り、長時間労働に陥りやすい企業の特徴として、

  • 業務が属人化し、キーマンに業務が集中してしまっている
  • 『人手不足』だからと諦めてしまっている
  • 決算修正が多く、作業の手戻りにより業務が増えてしまっている
  • その他(会議が多い、社内説明資料の作成に時間を割かなければならない)

等が挙げられます。そして、長時間労働を是正するためには、『残業をさせない』といった強制的なルールを策定する、あるいは、指示だけ与えて対応は現場任せにする等、形だけの対策を採っても根本的な解決にはなりません。

では、経理部や開示書類作成を担当される部署において、長時間労働を削減し生産性の高い組織にするためには、どうすれば良いか?

この点について、私の考える対応策を本コラムで紹介したいと思います。 続きを読む →

長時間労働に陥りやすい企業の特徴④-その他

特徴④ その他

長時間労働に陥りやすい企業のその他の特徴を以下に記載します。

  • 会議が必要以上に多い(例えば打合せをする前に関係者で集まって打合せの打ち合わせまでしているような会社)
  • 会議の時間が長い
  • 会議の参加者メンバーが多い
  • 付き合い残業が多い
  • 残業が習慣になってしまっている
  • 社内説明用の資料が多い(社内の経営会議等で説明するための資料作りが膨大で、決算の時期にその対応もしている)

まとめ

このように長時間労働に陥っている企業にはいくつか共通する特徴があります。

これらの改善を図るには、担当者個人の判断でできるものでは少なく、多くの場合、組織として取り組む必要があります。 続きを読む →

長時間労働に陥りやすい企業の特徴③-決算修正が多い

特徴③ 決算修正が多い

長時間労働に陥る企業に多い特徴の3つめは、決算修正が多いことです。

下の図(図3)では、当社で支援している3月決算の会社のうち、決算発表間際まで財務諸表の修正が入ることの多かった会社のスケジュール例です。
上段が計画で下段に書いているのが実績になります。比較しやすいようにガントチャート形式で載せております。 続きを読む →

長時間労働に陥りやすい企業の特徴②-人手不足

特徴② 人手不足

長時間労働に陥っている企業に多い特徴の2つめは、「人手不足」を理由にされていることです。

「良い方が採用できない」「採用できないから、既存メンバーで残業してでも回すしかない」と嘆いていらっしゃる会社の話を良く聞きます。

ここ数年、特に、決算や開示実務経験者の求人は多く、完全に就職者の「売り手市場」の状態が続いております。

このような環境ですから、採用募集しても、即戦力となる「経験者」がすぐには見つからず、仮に採用できたとしても、「売り手市場」なので、他に良い条件の求人が見つかればすぐに転職されてしまいます。

このような「人手不足」や環境のせいにして、長時間労働はやむを得ないと諦めてしまっている会社が多いですが、一方で採用が上手くいっている会社や人材の育成・ローテーションが上手くいっている会社も存在します。

採用や人材の育成が上手くいっている会社とそうでない会社で、いったい何が違うのか、その背景にある根本原因について考えてみますと、、 続きを読む →

長時間労働に陥りやすい企業の特徴①-業務属人化

上場企業の経理部やIRに携わる部署においては、四半期毎に訪れる決算の時期にどうしても業務が集中し、残業時間が増えてしまうという課題を抱えられているケースが非常に多いです。本ブログでは、そのような企業に共通する特徴とその背景について解説いたします。

特徴① 業務属人化

まず、長時間労働が発生してしまっている会社において圧倒的に多い課題の1つとして『業務の属人化」が挙げられます。 続きを読む →

孫正義-300年王国への野望-に学ぶ プラットフォーマー戦略

「孫正義ー300年王国への野望ー」(日本経済新聞社)は、巨大企業ソフトバンクを築いた孫社長がどのような経営者かを知るうえで、とても参考になる。特に、米スプリント社に続き英アーム社を買収した背景に「一貫した戦略」があることを理解でき、これからの同社の成長が楽しみになった。

本書でも紹介されているとおり、孫社長は米国の石油会社を例に出し、「シェアで1位になるとそのエリアでライバルを完全に制覇したら値段を少しずつ上げて儲かるようにしていく」というマーケティング戦略を語られることがあるそうだ。

ロックフェラーのように「流通の上流と下流の最大手を一気に独占してしまうことが、流通のプラットフォーマーとなる最短距離だ」との考えは、大胆だがとても興味深い。ここ最近のソフトバンクの一連のM&A戦略も、この視点から考えると一貫性があることに気付かされる。

また、本書では、ソフトバンクが現在の巨大企業になるまでに、様々な方々の支えがあったことを紹介している。成長ステージによってCFOの求められるスキルが異なることを、実例を読んで改めて感じた。

「ツーペア」より「フォーカード」を狙うという孫社長流の思考法を見習いたい。

業務属人化からの脱却方法⑥-まとめ

これまで5回に渡り、開示業務の属人化を解消するための方法について解説してまいりました。そのポイントを纏めると、以下の通りとなります。

  • 法定開示書類の作成実務は、その業務の性質上、属人的な業務になりやすい傾向があります。
  • 業務属人化を放っておくと、開示遅延リスク退職リスク不正リスク等につながる可能性がありますので、継続開示義務を負っている上場会社としては、対策を講じる必要があります。
  • 業務属人化を解消するためには、①複数の担当者が同じ業務をできる体制とし、②担当業務及び開示書類作成過程の「見える化」「標準化」を行い、③これらが継続して運用される「仕組み」をつくる必要があります。
  • 業務属人化を解消し、ブラックボックス化しない「仕組み」を創るには、①開示項目と基礎資料との紐付けを行い、開示書類作成過程の「見える化」を行うこと、②基礎資料の「標準化」を行い、誰が見ても分かりやすい作り方とすること、③開示チェックリスト等を活用し、誰が開示書類を作成しても品質を維持できる「仕組み」とすることがポイントです。
  • 「仕組み」を維持し業務を定着化させる為には、業務マニュアル等の活用が効果的です。

業務属人化を解消するための方法

このように、開示書類作成過程の「見える化」「標準化」を行い、チェックリスト等を活用して担当者のレベルアップを図ることで、開示業務の分担や引継ぎを推し進め、複数の担当者が同じ業務をできる体制にすることが可能となります。その結果、業務属人化リスクを軽減することにもつながるわけです。

是非、皆様方の会社でも、開示業務の「見える化」「標準化」を図り、複数の担当者が同じ業務をできる体制を目指しましょう。

業務属人化からの脱却方法⑤-属人化しない 『仕組み』を創るための3つのポイント

本稿では、開示業務がブラックボックス化しないための「仕組み」を創るうえでのポイントを3つ紹介します。

①開示項目との紐付け

まず、開示書類の作成過程の見える化を図るために是非行っていただきたいのが、開示項目と基礎資料の紐付け作業になります。
開示書類の各開示項目とそれらを記載するために作成・集計した基礎資料との関連性を明らかにし、開示書類の作成過程の「見える化」を行うことが、業務の引継ぎを行う際や、進捗を管理する上でも重要です。

当社で開示書類作成アウトソーシングのサービスを提供しているお客様については、開示書類作成の根拠となる資料を一覧表に纏め、それぞれの基礎資料が法定開示書類(短信、有価証券報告書・四半期報告書、計算書類等)のどれに使用しているかを整理します。その上で、開示項目の目次単位で、基礎資料との紐付け作業を行ない、その管理表に基づいて、開示項目の整理と進捗管理等を行っております。作成プロセスを可視化することは、内部統制上も重要です。

②基礎資料の標準化

次に、基礎資料、開示根拠資料等の標準化です。「自分にしか読み解けない資料」「作成過程を解読することが困難なスプレッドシート」が存在すると、それを引継ぐことや、第三者がチェックするのは難しく、その結果、誤謬リスクにつながりかねません。

ですから、第三者がみても容易にチェックやトレースができ、基礎資料から開示書類への転記ミスが起こり難いようなフォームを採用することが重要となります。

例えば、税効果関係や金融商品関係の注記を作成する場合、スプレッドシート上で、開示書類に転記する最終結果を開示する単位(例えば、千円)で作成しておくと転記ミスを減らすことができます。また、開示根拠資料となるスプレッドシートに余計な情報を入れすぎないように留意すべきです。様々なブックとのリンクを貼ったり、難しい関数を駆使してデータ連携をさせるのも避けるべきです。作成した本人にしか解読できず、引継ぎの際に苦労しますので、注意しましょう。

③チェックリストの活用

最後は、チェックリストの活用です。

ベテランの担当者が部署異動等で担当替になると、途端にクオリティーが下がり、監査法人から様々なミス・不整合の指摘が増えるというケースがあります。これは、経験不足が原因なので、ある程度はやむを得ないことだですが、内部統制上は、やはり監査法人頼みにするのではなく自社でチェックできる体制を築くべきです。ですから、ベテランの属人的なチェックに頼ることなく品質を維持するために、チェックリストの活用はとても重要になります。

開示書類の漏れや記載誤りを自社のメンバーで発見でき、その品質を維持するために、チェックリストの導入・活用を是非ご検討頂きたいと思います。

以上、3つのポイント各々について自社の体制を見直し、開示業務の属人化を解消する糸口を探して頂きたいと思います。

業務属人化からの脱却方法④-属人化を解消する3つの要件

今回のコラムから、法定開示書類作成実務における業務属人化を解消する方法について解説します。

属人化を解消するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

複数の担当者が同じ業務をできるようにしておくこと

②担当業務及び開示書類作成過程の見える化標準化を図ること

③これらが継続して運用されるための『仕組み』をつくること

人数に余裕があれば、複数の担当者が同じ業務をできる体制を築くことで業務属人化の解消を図っていくということが可能となります。

ですが、いくら複数の担当者が同じ業務を担当していても、従前どおり会社独自の方法、第三者からは分かり難い方法で実務を行っていたら、前回のコラムで紹介した属人化により生じるリスクの全てを解消することにはなりません。

開示業務の担当者が何をどのように作成しているのか、プロセスを明確にすることで、他の者が業務を引き継ぎやすくなります。また、誰でも同じ業務ができるようプロセスの標準化を図ることが重要となります。

そして、これらの体制を維持するためには開示業務作成プロセスにおける標準化の『仕組み』を創ることが何より重要となります。

いくら業務プロセスをマニュアル化し見える化できたとしても、それらを活用して、体制を継続できるための『仕組み』を作らなければ、長続きせず、結局、以前の様な属人的な業務に戻ってしまう可能性があるからです。

次回のコラムからは、この『仕組み』をどのように創っていくかについて解説します。

業務属人化からの脱却方法③-業務属人化がもたらすリスク

今回は、法定開示書類作成実務における業務属人化のリスクについて解説します。

『開示実務ができるキーマンがいて、それで実務が回っていれば特に問題ないではないか?』と考えられる方もいらっしゃると思います。この業務属人化という状況を放っておくとどのような事態を招くのかについて、当社で提案に伺った際に伺った実話をもとに、いくつかの事例を紹介します。

ケース1:誰とも業務を共有しないまま、経理部長が突然退社

上場申請書類の作成から上場後の開示書類の作成まで取り纏め役として、開示書類の大部分に関わってこられた方が急遽退社され、過去に作成した開示根拠資料がどこにあるか、どのように集計・作成されていたかなどの引継ぎが十分になされなかったそうです。後を託された方が対応に困り、弊社へ相談が持ち込まれました。
この会社では開示の実務経験者の採用も行われておりましたが、良い方が直ぐには見つからず困っておられました。
このようなケースが生じると何が問題となるかというと、まずは過去の注記や書類の作成プロセスを十分に理解しないまま本決算対応をすることになり、当然、過去のやり方・考え方と違うポリシーで作成してしまう、あるいは、情報不足で誤った数字を拾ってしまうなどの誤謬発生リスクが高まります。
また、このお客様のケースでは何とか予定通りに決算発表、法定開示書類の提出が間に合いましたが、場合によっては開示書類提出の遅延、つまり開示遅延リスクを招くことにもなりかねません。
さらに、急いで採用を決定してしまうと、採用のミスマッチが生じるなど、採用リスクも高まることにつながります。
この様に、キーマンが突然退社されると、様々なリスクが生じます。

ケース2:担当者が産休のため、1年間休職することが決定

この会社では、開示システムへの入力業務を担当されていた方が産休に入られることとなり、その結果、開示書類の作成、入力ができる担当者が一次的に不在になるという事態になりました。
産後、復職された後はこれまで通りの体制に戻る予定であったため、一時的なリソース不足を補うため、弊社にアウトソーシングのご相談がございました。
この様なケースでは、リソースの補充という手段が採れない限り、上長や同僚の業務負荷が高まり、長時間労働での対応を余儀なくされる事態も想定されます。そうなりますと、体調を崩すなどの労務リスクや、場合によっては疲労やストレスが原因で退職してしまうという事態(退職リスク)を招きかねません。

ケース3:管理部門責任者が連結決算から開示まで1人で担当

この会社では、管理部門責任者による会社資金の私的流用、着服が発覚し、責任者の方が解雇されました。
これまで連結決算から開示までこの方が1人で対応され、引継ぎ資料やマニュアルなどが存在しなかった為に、これまでの作成プロセスを紐解くだけで相当の時間がかかってしまったそうです。そこで、決算発表が期日に間に合わなくなるリスクを回避するため、弊社で開示書類の作成部分を支援することとなりました。
この会社のように、特定のキーマンに業務が集中し、それをチェックする人がいない状況を作ってしまうと、このケースのように不正リスクに繋がりかねないので、ガバナンスの観点からも業務分担とその統制には十分な留意が必要となります。

 

これら3ケースは、上場会社において実際に起きた事例です。

確かに、業務の属人化が起きてしまっていたとしても直ぐには困らないかもしれませんが、ここで紹介したリスクを考えると、上場会社として継続開示義務を負っている以上は、何らかの対策を検討しなければなりません。

次回のコラムから、属人化を解消する方法について解説します。